選挙ポスター1枚150円の話。議員になるための「チュートリアル」かもしれない

ながたのひとり言

2023年の京田辺市議会議員選挙で、私は選挙ポスターを1枚約150円で制作しました。当時、こちらのホームページでも「1枚150円の選挙ポスター」という記事を書いています。

選挙ポスターには一定の範囲内で税金が使われる公費負担制度があります。当時、私が計算した公費負担上限額は1枚約2,650円。それに対し、私の制作費は約150円。その差は約17倍でした。

ただし「150円で十分」「高いポスターは無駄だ」と言いたいわけではありません。あれから3年、財政や行政のあり方を考えるなかで、この体験には別の意味があったと感じています。

自分の選挙に使う費用の必要性を考え、無駄を省き、適正な支出を見極める。これは議員になるための一種の「チュートリアル」かもしれません。

当時の制作費を比較

制作費(1枚)

約150円
当時の公費負担上限の試算(1枚)

約2,650円

※上限額は実際の支出額ではなく、150円に自身の編集作業の人件費は含みません。

そもそも、なぜ150円で作ろうと思ったのか

当時、公費負担の上限額を見て「今の印刷技術で、そんなにお金がかかるものなのかな?」と疑問に思いました。今はパソコンで画像を編集し、ネットで印刷を発注できる時代。そこで自分でデザインを作り、格安印刷サービスを使ってみたわけです。

結果は1枚約150円。以前使用したものに比べて素材が少し薄く、粘着力も弱めで、貼るときには多少頼りなさを感じましたが、実際に選挙ポスターとして使えました。

なお、そのときは少額だったことや契約や申請手続きが面倒だったこともあり、公費負担を申請せずに自費で制作しました。詳しい経緯は当時の記事で紹介しています。

公費負担の制度は、なぜ必要なのか

選挙には「選挙公営制度」があります。選挙カー、運転手、選挙運動用ポスターやビラなどの経費を、一定の条件・上限額の範囲内で公費負担する仕組みです。

資金力の違いによって立候補の機会に大きな差が生じないようにすることは、民主主義にとって大切です。私も制度自体は必要だと考えています。

ただし、公費負担が認められることと、実際に使う額が適切なことは別です。上限額まで使うことが目的ではなく、実際の契約額が上限額より低ければ、原則その費用が負担対象になります。公費で使える金額と、本当に必要な金額は必ずしも同じではありません。

安ければいい、という話ではない

ここは今回、特に伝えたいところです。私が150円で作ったからといって、すべての候補者が150円で作るべきだとは思っていません。

例えば橋を建設するとき、「支柱を半分にすれば建設費を3割削減できます」と提案されても、橋の安全性や耐久性に問題が出るなら採用できません。そんな橋は怖くて渡れません。反対に、必要以上に過剰な構造や設備を採用して費用が膨らむのも適正とはいえないでしょう。

橋なら、想定する荷重や交通量、耐用年数、安全性に見合う品質が必要です。では、選挙ポスターはどうでしょう。基本的には1週間の選挙運動期間、屋外掲示板に貼られるものです。その間、雨風で剥がれず、色あせず、名前と顔がはっきり伝わり、発色や見栄えも確保できることが大切です。しかし何年もの耐久性まで求めるものではありません。

必要な期間、役割を果たす品質を見極め、その品質を実現するのに適正な費用はいくらなのか考える。安くするために品質を犠牲にせず、必要な品質を確保しながら無駄を省く。行政の事業にも共通する発想だと思います。

150円と2,650円は、単純に比較できない

私の制作費150円には、自分で行った画像編集やレイアウトの人件費は含まれていません。写真撮影、デザイン、校正、印刷まで専門業者に一括して依頼すれば、当然それ相応の費用がかかります。素材の耐久性や印刷品質によっても価格は変わります。

ですから、150円という数字だけを根拠に、高いポスターはすべて無駄だとは言えません。ただ、自分でできる部分を工夫し、必要な品質を見極めた結果、費用を大幅に抑える方法があったのも事実です。

大切なのは支払う金額に対し、何が提供されるのかを理解すること。同じ品質や成果がより少ない費用で得られるなら、その方法を選ぶ合理性があります。必要な品質のために高い費用がかかるなら、それも正当な支出です。

議員になるための「チュートリアル」

人口減少や高齢化が進む地方自治体では、財政運営の難しさが増していきます。税収への影響が懸念される一方、社会保障や老朽化した施設の更新など、必要な支出は続きます。限られた財源をどこに、どれだけ配分するのか。行政には難しい判断が求められます。

そして、予算・決算を審査し、お金の使い方が適切かをチェックし、改善を提案するのは議員の大切な役割です。何億円、何十億円という予算を審査する人が、自分の選挙で使う公費について何も考えず上限額だけ見て発注するのだとしたら、少しもったいない気がします。

自分の選挙に使うお金も、必要な品質は何か、何が不要か、削減できる部分はないかを調べ、考え、判断してみる。これは行政予算を審査するときの考え方によく似ています。自分でポスターを作らなければ失格だとか、公費負担を受けるべきではないという話ではありません。

ただ、公費の適正な使い方をチェックする立場になろうとするのであれば、まず自分が使う公費の妥当性を考え、無駄を省く努力をしてみる。それは候補者として大切にしてよい心構えではないでしょうか。

制度の上限額も、時代に合わせて見直していく

2026年3月、京田辺市で選挙運動の公費負担に関する条例が改正され、ポスター制作費の上限算定に用いる単価部分が引き上げられました。人件費や資材価格の上昇を考えれば、改定に理由があることは理解できます。

一方、デジタル化によって制作方法や費用構造が変わっているのも事実です。上限額が市場価格や必要な作業内容に合っているか、定期的に検証する価値はあるでしょう。

ただし、上限を低くしすぎれば、デザインを自作できる人と専門業者へ依頼しなければならない人との間に格差を生む可能性もあります。選挙の公平性を守りながら、制作費の実態に基づく合理的な負担額を考えたいと思います。

自分のお金なら、どう使うだろうか

予算・決算を審査するとき、私が大切にしたい問いがあります。「このお金が自分のお金だったら、同じように使うだろうか」。もちろん公共事業と個人の買い物は同じではありません。行政は採算だけで判断できない役割も担っています。

ただ、自分のお金なら必要以上に高いものを選ばず、安いという理由だけですぐ壊れるものも選ばないでしょう。必要な性能、価格、長く使えるかなどを比べて納得できるものを選ぶ。その慎重さは公費にも必要です。

しかも行政が扱うお金は自分のものではなく、市民から託されたものです。だからこそ、必要性や金額の妥当性をいっそう丁寧に説明できなければならないと思います。

おわりに|150円のポスターが教えてくれたこと

3年前、私が選挙ポスターを1枚約150円で作ったのは、「どこまで安くできるだろう」という好奇心もありました。今振り返れば、必要な品質を見極めること、費用の内訳を理解すること、自分でできる工夫をすること、支出に見合う価値を考えることを実践した経験でもありました。

選挙ポスター1枚の費用は、自治体の予算全体から見れば小さなものです。しかし、小さな支出の妥当性を考えずに、大きな支出を適切に判断するのも難しいのではないでしょうか。

節約そのものが目的ではありません。必要なものに、必要なだけ、適正なお金を使うこと。選挙ポスター1枚150円という経験は、議員としてお金の使い方を考える原点の一つになっているのかもしれません。

関連記事

1枚150円の選挙ポスター(2023年4月18日)

参考

京田辺市の選挙運動の公費負担に関する条例

※制作費約150円は2023年当時の実績です。現在の印刷価格ではありません。

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