POLICY INSIGHT / 行政DX・市民サービス
限られた人材を、必要な市民サービスへ。
オンライン化は入口。仕事の重複をなくし、職員が必要な仕事に集中できる仕組みへ。市民サービスと将来の行政運営を支えるDXを考えます。
スマートフォンで市役所の手続きができる。わざわざ窓口まで行かずに済む。これは、とても便利なことです。
でも、ここで少し想像してみてください。スマホから送った申請書が、市役所に届いたあと、紙に印刷され、別のシステムに一つずつ打ち直されていたとしたら……。
利用者には便利になっても、市役所の仕事そのものは、あまり変わっていないかもしれません。私が考える行政DXは、ここから先が本番です。
そして私がDXを重視する理由は、窓口の便利さだけではありません。行政の仕事が複雑になる一方で、人と予算には限りがあります。仕事の仕組みを見直し、市役所に「人と時間の余力」をつくることが、今後ますます重要になると考えています。
「デジタル化」と「DX」は、どう違う?
DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略です。要は、デジタル技術を使って、仕事やサービスの仕組みそのものをより良く変えること。単に紙を画面に置き換えることだけではありません。
入口だけのデジタル化:スマホで申請 → 職員が印刷 → 紙で回覧 → 別システムへ再入力。市民の手間は減っても、職員の仕事は増える可能性があります。
目指したいDX:申請から処理まで安全に情報を引き継ぎ、重複する入力・印刷・確認を減らす。職員は例外的な案件や、相談・判断が必要な仕事に時間を使えるようにします。
もちろん、すべての業務が自動化に向いているわけではありません。本人確認や審査など、人が判断すべき場面は残ります。大切なのは、機械に任せられる仕事と、人が丁寧に対応すべき仕事を見極めることです。
京田辺市でも、取り組みは進んでいます
京田辺市はDX推進計画を策定し、「暮らしを便利に、業務をスマートに」を掲げています。行政手続きのオンライン化などに加え、庁内業務の見直し(BPR)も計画に位置付けています。
問題提起したいのは、計画の方向性そのものではなく、その改革を現場の業務一つひとつで、どこまで実現できるかという点です。
なぜ今、市役所の仕事の仕組みを変える必要があるのか
市役所の仕事は、住民票の交付や窓口対応だけではありません。福祉、子育て、防災、教育、税務など幅広い分野があり、国の制度改正や新たな施策への対応も求められます。新しい仕事が増える一方、これまでの事務が必ずしも減るわけではありません。
書類の確認、同じデータの入力、部署間の照会、報告資料の作成。こうした作業が積み重なれば、職員が日々の仕事を終えるだけで精一杯になることも考えられます。人材の確保、人件費やシステムの維持費、財政上の制約にも目を向けなければなりません。新しい仕事が増えるたびに、人手や予算を追加するだけでは、将来の選択肢が狭くなりかねません。
補足:ここで述べているのは、行政運営の構造的な課題と私の問題意識です。京田辺市の時間外勤務がどの程度発生し、どの業務に負担が集中しているかについては、今後、資料や現場の状況を確認していきます。
「その人しかわからない仕事」を減らす
長年の経験を持つ職員は、行政の強みです。ただし、手順や判断の根拠が特定の人の頭の中にしかないと、その人が異動・休暇・退職したときに仕事が滞りかねません。業務を整理し、手順や情報の引き継ぎ方を共通化することは、経験や知識を組織の財産に変えることでもあります。
忙しい部署に、必要なとき人を回せるように
仕事の手順がわかりやすく、繰り返し作業が簡単になれば、別の部署から応援に入りやすくなります。制度改正や申請の集中、災害対応など、急に人手が必要になる場面で、部署を越えて助け合う余地が生まれます。私が確保したいのは、この「いざというときに動かせる人手と時間の余裕」です。
浮いた時間を、削減だけで終わらせない
単純作業の時間を減らせたなら、その力を、相談に時間が必要な市民への対応、支援が届いていない人の早期把握、複雑な案件の調整、現場に足を運ぶ活動などに振り向けられます。時間が浮けば自動的に人を再配置できるわけではなく、業務量を測り、配置や組織運営まで見直して初めて成果につながります。
01 繰り返し作業を減らす:転記・印刷・照会の重複を減らす。
02 仕事を組織で引き継ぐ:手順やノウハウを共有する。
03 繁忙期にも助け合う:部署を越えた応援や柔軟な人員配置を可能にする。
04 市民に向き合う時間を増やす:相談・判断・支援など、人だからこそできる仕事を厚くする。
これは職員を減らすことを先に決める議論ではありません。人手不足や財政上の制約があっても、市民へのサービスを守り、必要な分野を充実させられる組織をつくるための議論です。
他の自治体から学べること
北海道北見市では、手続きをただ電子化するのではなく、窓口の仕事の流れそのものを見直してきました。デジタル庁も「書かない・待たない・回らない窓口」の事例として紹介しています。学びたいのは特定の製品ではなく、「まず仕事を見直し、それに合う技術を選ぶ」という順番です。
京田辺市で進めたい、5つの改革
1.市民の手続きが、庁内でどう処理されるかまで調べる
申請ボタンの先で何が行われるのか。紙への印刷、再入力、重複確認がどこに残るのか、事実を確認し、業務ごとに可視化します。
2.担当課任せにしない、横断的な業務改革
複数の課やシステムにまたがる仕事は、一つの課だけでは変えられません。現場を知る職員と業務改革・システムに詳しい人材が一緒に進める体制が必要です。
3.一時的に専門人材を集中投入することも検討する
改革を通常業務に上乗せするだけでは、かえって負担が増えます。対象業務を絞り、一定期間、庁内外の専門人材を集中的に配置する方法も検討したいと考えます。
4.仕事の標準化と、柔軟に助け合える職場づくり
必要な判断は残しながら、手順・帳票・情報の持ち方を揃える。異動時の引き継ぎや部署間の応援をしやすくし、人材育成や配置改善もあわせて進めます。
5.「導入した数」より「何が変わったか」を測る
オンライン化した手続きの数だけでなく、処理時間、再入力の回数、時間外勤務、引き継ぎにかかる時間、相談対応へ充てられた時間などを確かめたいと思います。
デジタルが苦手な人を置き去りにしない
DXは窓口を減らすことと同義ではありません。スマートフォンが苦手な方、対面で相談したい方、複雑な事情を抱える方には人による支援が必要です。オンラインと対面は両立できます。個人情報の保護、システムの安全性、導入・維持費用の検証も欠かせません。
目指すのは「デジタルな市役所」ではなく「余力のある、良い市役所」
行政の仕事が増え、財源にも人材にも限りがあるからこそ、同じ仕事をもっと簡単に、確実にできるようにする。その結果生まれた時間と力を、人が向き合うべき市民サービスに充てる。私が行政DXに期待しているのは、この循環です。
この分野については、今後も市の取組状況や他自治体の実践を調査し、議会での確認と提言を重ねていきます。
参考資料
※京田辺市の業務負担や時間外勤務の発生状況を断定する記事ではありません。今後の調査で確認していきます。

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