G7の国会議員はどれだけ公費を使っている?――日本の歳費・活動費・秘書・事務所費・交通費・住宅費・通信費・政治献金を7カ国で比較
2.導入
「国会議員は歳費だけで年収2,000万円」「文書通信交通滞在費(現・調査研究広報滞在費)が月100万円も非課税で支給される」――こうした話題は、選挙のたびにSNSやニュースで繰り返し取り上げられます。一方で「アメリカの議員はもっと高給取りだ」「イギリスの議員はスタッフ予算だけで数千万円使っている」という声もあります。
しかし、これらの数字を正しく比較するのは、実はかなり難しい作業です。国によって、
- 議員本人に「現金で」渡される部分と、議会・第三者機関が「直接支払う」部分の境目が違う
- 秘書やスタッフの給与を議員個人が管理するのか、議会事務局が一括で管理するのかが違う
- そもそも「活動費」という概念があるのかないのかが違う
という制度上の違いがあり、金額だけを並べても「リンゴとオレンジの比較」になりがちです。本記事では、この問題を避けるため、各国の制度をできる限り分解し、①議員本人の所得、②議員本人+直接支給される活動費、③議員1人を支えるための公的資源全体という3つの階層に分けて整理しました。
3.結論の要約
- 議員本人の「給与」だけを見ると、日本はG7の中で突出して高いとは言えません。むしろ米独より低く、仏伊より高い中位の水準です。
- ただし日本には、議員本人に現金で・非課税で・使途報告義務が比較的緩やかな形で支給される「調査研究広報滞在費」(月100万円)という、他国にあまり例のない制度があります。
- 一方、米・加・英は議員本人への現金給付は基本的に給与のみで、その代わりスタッフ・事務所に極めて大きな公費(年間数千万円〜3億円超)を投じています。
- したがって「歳費だけ」でも「本人受取額だけ」でも比較は不十分で、「議員1人を支える政治インフラの総コスト」で見る必要があります。
- そのうえで見ると、日本の総公費はG7の中では中位〜やや低位に位置し、突出して高いとは言えません。ただし、公費のうち「議員本人が現金で受け取れる部分の比率」は、日本はG7の中でも高い部類に入ります。
4.G7の議員本人の給与比較(レベル1:本人の所得)
まず、税・社会保険料が引かれる前の「議員本人が個人所得として受け取る額」だけを比較します。これは日本でいう歳費+期末手当、米国の統一年俸、英国のIPSA決定給与などにあたります。為替レートは2026年8月時点の実勢相場(1ドル=約159円、1ユーロ=約184円、1ポンド=約215円、1カナダドル=約115円)で換算しています。
| 国 | 本人給与(現地通貨・年額) | 円換算(年額) | 根拠となる直近の制度改定 |
|---|---|---|---|
| 🇯🇵日本 | 歳費 月129.4万円×12+期末手当 約638万円 | 約2,191万円 | 2026年6月期末手当は据え置き改正法により満額支給 |
| 🇺🇸米国(下院・上院とも一般議員) | 174,000ドル | 約2,767万円 | 2009年以来 base salary は凍結、2026年も$174,000 |
| 🇩🇪ドイツ | Diät 月12,330.48ユーロ×12 | 約2,722万円 | 2026年7月に賃金指数連動で4.2%増額 |
| 🇮🇹イタリア | indennità 月10,435ユーロ(総額)×12 | 約2,304万円 | 2012年の削減水準が2026年末まで据え置き継続 |
| 🇨🇦カナダ | sessional indemnity 約209,800カナダドル | 約2,413万円 | 2026年4月に賃金指数連動で改定 |
| 🇬🇧英国 | 98,599ポンド | 約2,120万円 | 2026年4月よりIPSAが5%増額を決定 |
| 🇫🇷フランス | indemnité parlementaire 月7,637.39ユーロ×12(総額) | 約1,686万円 | 公務員高位級の俸給に連動 |
※表は横スクロールできます。
この「本人給与だけ」の比較で見ると、G7の中ではドイツ・米国がやや高く、フランスが最も低いという順になります。日本は中位からやや上に位置しており、「歳費が世界一高い」という単純な言説は一次資料からは裏付けられません。
5.日本の国会議員の歳費・活動費
日本の制度は複数の要素から成り立っています。総務省・衆参両院の公式資料に基づき、2026年8月時点の内容を整理します。
① 歳費(月額129万4,000円)
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律で月額129万4,000円と規定されています。2025年末〜2026年にかけて、歳費本体の増額(月5万円)は世論の反発を受けて見送られ、据え置かれました。
② 期末手当(年間約638万円)
年2回(6月・12月)支給される、いわゆるボーナスに相当する手当です。2026年6月支給分については、物価高への配慮から現行水準(議長約535万円、副議長約390万円、一般議員約319万円)での据え置きを定めた改正歳費法が成立しました。
③ 調査研究広報滞在費(月100万円・非課税)
かつて「文書通信交通滞在費(文通費)」と呼ばれていた制度で、2022年に日割り支給化、2024年に使途公開と残額返納が義務化されるなど、透明化が進んでいます。ただし依然として、議員個人の口座に現金で振り込まれる非課税の定額支給という基本構造は変わっていません。この制度の海外比較は次の第8章で詳しく扱います。
④ 立法事務費(月65万円・会派へ交付)
議員個人ではなく、所属する会派(政党の議員グループ)に対し、所属議員1人あたり月65万円が交付される経費です。使途公開の義務が法律で定められておらず、「第二の文通費」とも呼ばれ、透明性の課題が指摘されています。
⑤ 公設秘書3人(政策秘書・第一秘書・第二秘書)
議員は公費で3名までの秘書(政策担当秘書1名、第一秘書・第二秘書各1名)を雇用できます。給与は国費で負担され、3名分の合計はおおむね年間1,800万円〜2,500万円程度とされます(経験年数により変動)。2025年末には秘書給与法も改正され、業務調整手当が新設されました。
⑥ 議員会館・議員宿舎
永田町の議員会館に個室と秘書用スペースが無償で提供されるほか、都内に格安家賃の議員宿舎が用意されています。これらは現金給付ではなく現物給付であり、正確な金銭換算値が公式に示されていないため、本記事の総公費試算には金額として含めていません(この点は他国との比較上の限界として後述します)。
⑦ 交通費・JR/航空の議員向け制度
JR全線の無料パス、月4往復までの航空券などが議員特典として提供されています。こちらも現物給付であり、正確な年間金銭価値の公式試算は確認できませんでした。
6.G7各国の活動費・スタッフ・事務所費
🇺🇸米国:Members’ Representational Allowance(MRA)
米国下院議員には、給与とは別に「Members’ Representational Allowance(MRA)」という事務所運営予算が支給されます。これはスタッフ給与・事務所費(ワシントンと地元選挙区)・郵送費・通信費・出張旅費などをカバーする経費で、議員個人の懐に入るお金ではなく、議会が管理する事業予算です。2026年度予算では下院全体のMRA総額が8億5,000万ドルと計上されており、下院議員435人で割ると1人あたり平均約195万ドル(約3億1,000万円)という規模になります。米国の重要な特徴は、議員本人への定額の個人向け活動費が存在しないことです。
🇨🇦カナダ:Members’ Office Budget
カナダ下院議員には「Members’ Office Budget(議員事務所予算)」が割り当てられ、オタワの議会内事務所と選挙区事務所の運営費・スタッフ給与に充てられます。2025-26年度(選挙のあった年度)の下院全体の議員事務所予算の総支出は1億7,830万カナダドルと報じられており、343議席で割ると1人あたり平均約52万カナダドル(約5,978万円)となります。カナダにも米国同様、議員個人への定額の現金活動費という仕組みはありません。
🇬🇧英国:IPSA(独立議会基準機関)による管理
英国では2009年の議員経費スキャンダルを受け、Independent Parliamentary Standards Authority(IPSA)という独立機関が発足し、議員の給与・経費を議会から切り離して決定・支払う仕組みになりました。2026-27年度の予算(非ロンドン選挙区のMPの場合)は、スタッフ費27万6,540ポンド、事務所費3万7,080ポンド、住宅費2万2,780ポンド、スタッフ研修費4,000ポンドで、合計約34万400ポンド(約7,319万円)。これに議員本人の給与を足すと、1人あたりの総額はおよそ9,438万円になります。英国の特徴は、経費の設定・支払いが議会や議員本人ではなく、完全に独立した第三者機関によって行われる点です。
🇩🇪ドイツ:定額のKostenpauschaleと直接支給されないMitarbeiterpauschale
ドイツ連邦議会議員には、Diät(歳費)とは別に、非課税の定額経費「Kostenpauschale(コストパウシャーレ)」が月5,467.27ユーロ(2026年1月時点)支給されます。これは選挙区事務所の家賃、ベルリンでの住居費、選挙区活動の交通費などに充てる想定の定額支給ですが、使途の個別報告義務はなく、日本の調査研究広報滞在費に近い性格を持ちます。加えて、スタッフ雇用のための「Mitarbeiterpauschale(人件費予算)」が月27,396ユーロ(2026年5月時点)用意されていますが、こちらは議員本人の口座を経由せず、連邦議会事務局が直接スタッフに支払う仕組みです。
🇫🇷フランス:DFP(議員活動費)とcrédit collaborateurs
フランス下院議員には2026年1月から、旧来のAFM(avance de frais de mandat)とDMD(dotation matérielle)を統合した「Dotation de Fonctionnement Parlementaire(DFP)」が月7,238.04ユーロ(本土選出議員)支給されます。2018年の政治改革以降、使途の証憑提出と残額返納が義務化され、透明性は大きく向上しています。これとは別に、最大5名のアシスタントを雇用するための「crédit collaborateurs」が月1万1,463ユーロ用意されていますが、こちらもスタッフに直接支払われる予算です。
🇮🇹イタリア:diariaと職務活動費
イタリア下院議員には、ローマ滞在費として「diaria」が月3,503.11ユーロ支給されるほか、「rimborso delle spese per l’esercizio del mandato(職務活動のための費用弁償)」月3,690ユーロがあります。後者は最大50%を証憑つきの経費(秘書・調査等)に、残り50%を定額で受け取れる仕組みで、最大3名までの協力者(collaboratori)の給与にも充当できます。
7.「議員1人当たり年間総公費」の比較
以下の表は、A:議員本人の所得、B:議員本人に直接支給される活動費、C:秘書・スタッフ費(+一部事務所費)を積み上げたものです。前述のとおり、各国で計上できる項目の粒度が異なるため、この総額は「議員1人を支えるためにどれだけの公費が動いているかの目安」として捉えてください。
| 国 | A:本人所得 | B:本人への直接活動費 | C:スタッフ・事務所費等 | 目安の総額(年間) |
|---|---|---|---|---|
| 🇯🇵日本 | 約2,191万円 | 約1,200万円 | 約2,780万円 | 約6,171万円 |
| 🇺🇸米国 | 約2,767万円 | なし | 約3億1,069万円 | 約3億3,835万円 |
| 🇨🇦カナダ | 約2,413万円 | なし | 約5,978万円 | 約8,391万円 |
| 🇬🇧英国 | 約2,120万円 | なし | 約7,319万円 | 約9,438万円 |
| 🇩🇪ドイツ | 約2,722万円 | 約1,208万円 | 約6,270万円 | 約1億200万円 |
| 🇫🇷フランス | 約1,686万円 | 約1,598万円 | 約2,531万円 | 約5,815万円 |
| 🇮🇹イタリア | 約2,304万円 | 約1,588万円 | 約292万円 | 約4,183万円 |
※表は横スクロールできます。
- 米国・カナダの金額には、議員会館の家賃や光熱費など、議会が直接負担する施設維持費は含まれていません(各国とも施設費は議会全体予算として別計上されており、議員1人あたりへの按分値が公式に示されていないため)。
- 日本の金額には、議員宿舎・JR無料パス・航空券などの現物給付は含まれていません。含めればさらに増加する可能性があります。
- 米国の総額が突出しているのは、スタッフを最大十数名規模で雇用できる制度設計(MRA平均額の大半がスタッフ人件費)によるものです。日本の公設秘書3名という上限とは前提が大きく異なります。
8.日本の「調査研究広報滞在費」と海外制度の比較
「日本だけが月100万円をもらっている」という単純化された言説をしばしば見かけますが、実態はより複雑です。G7各国には、程度の差はあれ、議員個人に定額で支給される非課税・低報告義務の経費が広く存在します。
| 国 | 制度名 | 月額(円換算) | 定額か実費精算か | 管理主体 | 使途報告義務 |
|---|---|---|---|---|---|
| 🇯🇵日本 | 調査研究広報滞在費 | 約100万円 | 完全定額 | 議員個人が管理 | 2024年より使途公開・残額返納が義務化 |
| 🇩🇪ドイツ | Kostenpauschale | 約100.6万円 | 完全定額 | 議員個人が管理 | 個別の使途報告義務なし(定額精算) |
| 🇫🇷フランス | DFP | 約133.2万円 | 定額だが証憑必須 | 議員個人が管理 | 倫理監督官への証憑提出・残額返納義務あり |
| 🇮🇹イタリア | diaria+mandato費の定額部分 | 約80.6万円 | 定額部分と実費部分の混合 | 議員個人が管理 | 半分は証憑必須、半分は定額(報告義務軽い) |
| 🇬🇧英国 | 該当制度なし(IPSAが実費精算) | - | 原則すべて実費精算 | 独立機関(IPSA)が直接管理・支払い | 領収書ベースで厳格 |
| 🇺🇸米国 | 該当制度なし(MRAは事業予算) | - | 議員個人向け定額支給なし | 議会(下院事務局)が管理 | MRAは議会予算として厳格に監査 |
| 🇨🇦カナダ | 該当制度なし(Office Budgetは事業予算) | - | 議員個人向け定額支給なし | 下院管理委員会が管理 | 四半期ごとに支出を公開 |
※表は横スクロールできます。
この比較から見えてくるのは、次のような制度設計の違いです。
- 「定額を議員個人に現金で渡し、その中で自由にやりくりしてもらう」タイプ:日本、ドイツが典型例。フランス・イタリアも定額部分を持ちつつ、証憑提出義務を課すことで折衷しています。
- 「議会・第三者機関が実費を厳格に管理し、議員個人の口座を経由させない」タイプ:英国(IPSA)、米国(下院事務局によるMRA管理)、カナダ(下院管理委員会)が典型例。
つまり、「月100万円という金額の大きさ」自体よりも、「議員本人の裁量に委ねる定額支給」か「第三者機関による実費精算」かという制度設計の軸で見た方が、各国の違いをより正確に理解できます。日本の調査研究広報滞在費は、月額の絶対値としてはドイツのKostenpauschaleと同水準ですが、使途公開の厳格さという点では、2024年の改正でフランス型に近づきつつある過渡期にあると言えます。
9.交通費・宿泊・住宅費・通信費の比較
🇯🇵日本
JR全線無料パス、月4往復までの国内線航空券、格安の議員宿舎、議員会館内の無償オフィスが提供されます。いずれも現物給付で、公式な金銭換算値は公表されていません。
🇺🇸米国
選挙区とワシントンの往復旅費、州事務所の家具什器費(上限4万ドル)などはMRAの枠内で処理されます。議員向けの専用住宅補助制度はなく、多くの議員がワシントンでは自費でアパートを借りるか、オフィスに寝泊まりするケースも指摘されています。
🇨🇦カナダ
選挙区とオタワ間の移動には年間の旅行ポイント制度(トラベルポイント)があり、議員本人・扶養家族・スタッフに配分されます。事務所家具什器はOffice Budgetの枠内で処理されます。
🇬🇧英国
2026-27年度、非ロンドン選挙区MPの住宅費(アコモデーション)予算は2万2,780ポンド(東京換算約490万円)。ロンドン選挙区は3万3,840ポンドとやや高めです。ホテル宿泊費の上限も細かく設定されています(ロンドン1泊230ポンドなど)。
🇩🇪ドイツ
ベルリン国内は市内公用車の利用が可能。国内線航空券とドイツ鉄道全線パス(BahnCard100)が支給されます。ベルリンでの第二の住居費用はKostenpauschaleから充当する想定です。
🇫🇷フランス
パリでの宿泊・第二住居費用はDFPから充当されます。国内公共交通の一部無料利用や、下院所有の公用車(運転手付き)約15台がパリ市内移動用に用意されています。
🇮🇹イタリア
ローマ滞在費としてdiaria(月3,503.11ユーロ)が支給されるほか、居住地から空港までの交通費として四半期ごとに約3,323〜3,995ユーロの定額精算があります。高速道路・鉄道・航空の国内無料パスも付与されます。
10.企業・団体からの政治献金の比較
政治献金の制度は、G7の中でも最もばらつきが大きい分野です。「企業から政治家個人への直接献金」「企業から政党への献金」「PAC等の中間団体を経由する仕組み」の3つの軸で整理します。
| 国 | 企業→政治家個人 | 企業→政党 | 個人→政治家個人 | PAC的な中間団体 |
|---|---|---|---|---|
| 🇯🇵日本 | 原則禁止 | 可能(政党・政党支部) | 可能(年150万円上限) | 「政治資金団体」(政党指定の受け皿、全国で数団体) |
| 🇺🇸米国 | 禁止(一般会計から) | 禁止(一般会計から) | 可能(上限あり) | 企業PAC(規制・上限あり)/SuperPAC(無制限、候補者と非調整) |
| 🇨🇦カナダ | 全面禁止 | 全面禁止 | 可能(年$1,775上限・2026年) | 存在しない(法人・団体からの献金自体が禁止) |
| 🇬🇧英国 | 可能(英国登録企業に限る) | 可能(同左) | 可能(上限なし) | 存在しないが「unincorporated association」経由の献金に透明性の課題 |
| 🇩🇪ドイツ | 可能(実務上は政党へ回付が前提) | 可能(上限なし) | 可能(上限なし) | 存在しない |
| 🇫🇷フランス | 全面禁止(1995年法改正以降) | 全面禁止(同左) | 可能(上限あり) | 存在しない |
| 🇮🇹イタリア | 可能 | 可能(自然人・法人とも年間€100,000上限) | 可能(同上限) | 存在しない |
※表は横スクロールできます。
11.政治献金の平均額・政治資金規模
「1件あたりの平均献金額」は、国によって公開の粒度(開示基準額、集計単位)が大きく異なるため、単純比較には限界があります。ここでは、可能な範囲で比較可能な指標を示し、比較が困難な項目は「比較困難」と明記します。
| 国 | 公開・開示の基準 | 比較可能な指標 |
|---|---|---|
| 🇯🇵日本 | 年間5万円超の献金者名を収支報告書に記載 | 党・団体単位の総額は公表されるが、G7横断で比較可能な「1件あたり平均」は比較困難 |
| 🇺🇸米国 | FECへの詳細な提出義務(候補者・PAC・SuperPAC別) | 直接献金とPAC/SuperPAC経由の資金が制度上まったく別枠のため、統一的な平均値の算出は比較困難 |
| 🇨🇦カナダ | $200超の個人献金者名をElections Canadaへ報告 | 企業献金は制度上ゼロ(全面禁止)。個人献金の平均額は本調査の一次資料からは確認できず比較困難 |
| 🇬🇧英国 | 中央政党へ£11,180超、以降£2,230超ごとに報告 | 2025年第1四半期の政党献金受領総額は約1,295万ポンド。ただし「1件あたり平均」は算出可能な形で公表されておらず比較困難 |
| 🇩🇪ドイツ | 年間€10,000超で年次報告、€35,000超は即時公表 | 2026年にAfDが受けた過去最高額の単発献金は150万ユーロ。全体平均は非公表のため比較困難 |
| 🇫🇷フランス | 国家政治資金委員会(CNCCFP)へ報告義務 | 個人献金主体で上限規制あり。平均額の一次資料公表は確認できず比較困難 |
| 🇮🇹イタリア | 年間€500超の献金を下院サイトで公開 | 2019〜2026年の累計は約12.4万件・総額約1.9億ユーロ(個人・法人合算、内訳非公開)。単純平均すると1件あたり約1,500ユーロ相当だが、これは参考値であり厳密な国際比較には使用に注意が必要 |
※表は横スクロールできます。
このように、G7各国は「献金の主体(個人・企業・PAC等)」「公開の基準額」「集計単位(政党単位・候補者単位・受領者単位)」がすべて異なっており、「1件あたりの平均献金額」を7カ国で横並びにする統一的な指標は、現時点の公開データからは作成できません。無理に数字を作ることは誤解を招くため、本記事では明確に「比較困難」と記載する方針を取っています。
12.G7比較から見える日本の特徴
- 本人給与だけならG7の中位:米独よりやや低く、仏より高い。
- 本人への定額直接支給という点では独特:調査研究広報滞在費(月100万円)は金額としてはドイツのKostenpauschaleと同水準だが、使途公開の厳格さでは仏伊の後塵を拝している段階。
- スタッフ規模はG7で最も小さい部類:公設秘書は原則3名まで。米国は数十名規模、英国・ドイツ・仏も数名〜10名規模のスタッフを公費で雇える。
- 総公費の絶対額はG7で低い方:米国の約5分の1、英国の3分の2程度の水準。
- 企業献金は「政党支部」という迂回路が特徴的:政治家個人への直接献金は禁止だが、政党支部を経由した実質的な受け皿が存在する点は、独自の制度的特徴。
13.「日本の国会議員は高いのか?」への回答
ここまでのデータを踏まえると、「日本の国会議員はG7と比較して高いのか」という問いには、単純な「高い」「安い」では答えられません。
- 議員本人の給与だけならば、日本はG7で突出して高いとは言い切れません。
- しかし、議員本人が定額で自由に使える活動費という点では、日本独自の特徴(調査研究広報滞在費)があります。
- 他方、海外もスタッフ・事務所等に非常に大きな公費を投入しており、その規模は日本よりはるかに大きいケースが多いです。
- したがって、「議員報酬」という一言でくくらず、「議員1人を支える政治インフラの総コスト」という視点で考える必要があります。
- そして最も重要な論点は、公費をどこまで議員本人に現金で渡すか、どこまで議会・第三者機関が直接管理・支払いするかという制度設計の違いです。日本は「本人への現金支給」の比率がG7の中でも高い部類に入る一方、「議員を支える組織的インフラ(スタッフ規模)」への投資はG7の中でも小さい部類に入ります。
14.制度改革を考える場合の論点
この記事のデータから、日本の制度改革を議論する際に浮かび上がる論点を、特定の政党・政治家への賛否とは切り離して整理します。
- 使途公開の厳格化:調査研究広報滞在費は2024年に前進したが、立法事務費は依然として使途公開義務がない。フランス(DFP)や英国(IPSA)のような証憑ベースの管理に近づけるかどうかは論点になり得ます。
- 第三者機関による管理の是非:英国のIPSAのように、議員報酬・経費の決定と支払いを議会から独立させる制度は、透明性の観点でメリットがある一方、独立機関の設置・運営コストという新たな課題も生じます。
- 秘書・スタッフ体制の拡充と歳費・活動費のバランス:公設秘書3名という枠は、米欧に比べて小規模です。仮に「本人への定額支給を減らし、代わりにスタッフ予算を増やす」という制度変更を行えば、他国型の構造に近づくことになります。
- 企業・団体献金の扱い:政党支部を経由した企業献金の扱いは、2026年の国会でも議論の的になっています。カナダのように全面禁止する方向と、ドイツ・英国のように上限なしで透明性のみを求める方向とで、G7内でも立場が分かれています。
15.まとめ
G7各国の国会議員の待遇を一次資料で再検証した結果、「日本の議員は優遇されすぎている」「日本の議員は他国より薄給だ」といった単純な二項対立では捉えきれない、制度設計の多様性が明らかになりました。日本の特徴は、議員本人への現金支給が比較的大きい一方、スタッフ・事務所への投資規模はG7の中で小さい部類に入るという「本人中心型」の構造にあります。米国・カナダ・英国は逆に、議員本人への現金は給与のみに絞り、スタッフ・事務所という「組織インフラ」に巨額の公費を投じる「組織中心型」の構造です。どちらが望ましいかは価値判断の問題であり、本記事はその判断材料を提供することを目的としています。
16.参考資料・出典
- 衆議院「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」e-Gov法令検索
- 日本経済新聞「議員ボーナス据え置きへ 歳費法改正案が衆院通過」(2026年5月26日)
- 時事ドットコム「改正歳費法が成立 議員ボーナス据え置き」
- 総務省「政治資金規正法のあらまし」総務省
- みんなの国会「政治資金規正法改正案」(第221回国会衆法第14号、2026年6月)
- U.S. House Clerk「Salary」(2026年7月)/Congress.gov「Legislative Branch Appropriations Act, 2026」
- Congress.gov「Congressional Salaries and Allowances: In Brief」
- House of Commons of Canada「Members’ Allowances and Services Manual」(2026年5月)
- The Hill Times「Total MP spending reaches $178.3-million in 2025-26」(2026年8月)
- IPU Parline「Canada: House of Commons, Parliamentary mandate」
- UK Parliament「MPs’ pay」/IPSA「Reports and budgeting」(2026年4月改定)
- House of Commons Library「Members’ pay and expenses 2025/26」
- Deutscher Bundestag公式サイト「Diäten」「Kostenpauschale」「Mitarbeiter」(2026年)
- Assemblée nationale「Fiche de synthèse n°7:La situation matérielle du député」(2026年1月8日更新)
- Camera dei Deputati「Il trattamento economico」(Conoscere la Camera、2026年)
- Elections Canada「Annual Limits on Contributions – 2026」
- Electoral Commission (UK)「Which donations and loans do you need to report?」
- Bundesministerium des Innern「Funding of Political Parties」
- Osservatorio CPI (Università Cattolica)「Il finanziamento dei partiti politici」
- FEC「Who can and can’t contribute to a party committee」
- NPR「Supreme Court strikes down limits on political party spending」(2026年6月30日)
本記事は2026年8月時点で確認できた各国政府・議会等の公式資料に基づいて作成した政策比較記事であり、特定の政党・政治家を支持または批判する意図はありません。制度は今後も改正される可能性があるため、最新の公式情報も併せてご確認ください。

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