ドイツの議員報酬はいくらぐらいか
生成AIで自分の顔を各国のイメージに加工して遊んでみました。
前回は、欧州主要国の基礎自治体議会のざっくりとした比較を行いました。今回からは、それぞれの国にフォーカスしてもう少し詳細に調べてみます。まず第一弾はドイツから。
ドイツの基礎自治体(市町村)議員の会議出席手当(Sitzungsgeld)は、自治体の規模によって異なりますが、1回の会議につき「20ユーロ〜50ユーロ程度(約3,000円〜8,000円)」が相場です。
ただし、ドイツの議員報酬は「出席手当」だけでなく、毎月の「固定手当(活動費)」と組み合わせて支給されるのが一般的です。
内訳と金額の目安を整理しました。
1. 会議出席手当(Sitzungsgeld)の目安
本会議や委員会に出席するたびに支払われる手当です。
- 小規模な町村(人口1万人未満): 1回 20〜30ユーロ(約3,200円〜4,800円)
- 中規模の都市(人口2万〜5万人): 1回 30〜40ユーロ(約4,800円〜6,400円)
- 大規模な都市(人口10万人以上): 1回 50〜60ユーロ(約8,000円〜9,600円)
- ※議長や委員長などの役職者は、この額が加算されたり、倍額になることがあります。
2. 固定手当(Aufwandsentschädigung)
出席手当とは別に、資料読み込みや住民対応などの「経費・活動費」として毎月定額で支払われるものです。
- 小規模な町村: 月額 100〜200ユーロ(約1.6万〜3.2万円)
- 中規模の都市: 月額 250〜400ユーロ(約4万〜6.4万円)
- 大規模な都市(フランクフルト等): 月額 1,000ユーロ前後(約16万円)まで上がるケースもありますが、それでも日本の都市部議員の報酬(月額60〜80万円)に比べると低額です。
3. その他:逸失利益の補填(Verdienstausfall)
これがドイツ制度の大きな特徴です。
- 会社員や自営業者が、議会に出席するために仕事を休んだ場合、その分の給与や利益が補償されます。
- 例えば「時給換算でXXユーロまで」といった上限や、会社からの給与減額証明書に基づいて実費が支払われます。
日本との比較まとめ
ドイツの一般議員(人口5万人程度の都市)の場合、月の収入イメージは以下のようになります。
- 固定手当: 300ユーロ
- 出席手当: 35ユーロ × 会議4回 = 140ユーロ
- 合計: 月額 440ユーロ(約7万円)
あくまで「ボランティア活動にかかる実費」という考え方であるため、これで生計を立てることは想定されていません。
ではドイツの議員は日本の市議会議員などと仕事の内容などが違うのでしょうか。
ドイツの議員と日本の議員では、「身分(職業かボランティアか)」と「議会の役割(行政との距離)」の2点において、仕事の内容やスタイルが大きく異なります。
日本の市議会議員が「行政のチェック機関」として独立しているのに対し、ドイツの地方議員は「行政の一部(監査役兼共同運営者)」に近い役割を担うことが多いです。
具体的な違いをまとめました。
1. 決定的な違い:「仕事」か「活動」か
| 項目 | 日本の地方議員 | ドイツの地方議員 |
| 身分 | 職業(プロ) | 名誉職(ボランティア) |
| 主な活動時間 | 平日 昼間 | 平日 夕方・夜間 |
| 生計 | 議員報酬で生活 | 別の本業(会社員等)で生活 |
| 兼業 | 難しい(日程的に困難) | 当たり前(権利として保障) |
- 日本の日常: 平日の朝から市役所に詰め、担当課と打ち合わせをしたり、昼間の本会議・委員会に出席します。
- ドイツの日常: 昼間は会社で働き、夕方17時〜18時頃から市役所に集まって会議をします。そのため、ドイツの議員にとって議会活動は「仕事の後の社会奉仕活動」に近い感覚です。
2. 仕事内容(役割)の違い
日本の議員の「一般質問」のような、市長に対して演説形式で問いただすスタイルは、ドイツの地方議会ではあまり一般的ではありません。
🇯🇵 日本:対立と監視(二元代表制)
- スタイル: 「市長(執行部)」と「議会」が明確に分かれています。
- 主な仕事:
- 一般質問: 本会議場で市長や部長に見解を問う(パフォーマンス的要素も含む)。
- 陳情対応: 「道路の穴を埋めてほしい」「カーブミラーをつけて」といった市民の個別要望を行政につなぐ。
- チェック: 提案された予算や条例に「イエス/ノー」を判定する。
🇩🇪 ドイツ:共同運営(機関統合型に近い)
- スタイル: 議会そのものが「行政の最高決定機関」という位置づけである州が多く、市長が議長を兼任することもあります。
- 主な仕事:
- 実務的な協議: 演説よりも、円卓での「実務打ち合わせ」に近い会議が多いです。行政職員と膝を突き合わせて「この予算の使い道はもっとこうした方がいい」と修正・決定に関与します。
- 専門家としての貢献: 議員が建築士や教師、医師などの本業を持っているため、「現場のプロ」として専門的な知見を行政運営に反映させます。
- 決定権: 日本の議会よりも、個別の行政執行(例:特定の建築許可や職員の人事など)にまで踏み込んで決定する権限を持っていることが多いです。
3. 日本の議員がドイツに行くと驚くこと
- 「一般質問」がない?
ドイツにも質問制度はありますが、日本のように「議員が演壇に立ち、市長が答弁書を読む」という儀式的な時間は少なく、委員会での質疑応答や、文書でのやり取りで済ませることが多いです。
- 「口利き」ではなく「決定」
日本では「道路を直してと担当課にお願いする(要望)」のが仕事になりがちですが、ドイツでは議会(または委員会)が「道路補修計画そのものを決定・変更する」権限を強く持っているため、裏側での要望活動よりも、会議での合意形成が重視されます。
結論
ドイツの議員の仕事は、「市民の代表として、夜間に集まり、本業の知見を活かして行政の実務的な決定(人事や契約含む)を一緒に行うこと」と言えます。
一方、日本の議員は「専業の政治家として、昼間に行政を監視し、市民の声を届けること」に特化しています。
各国それぞれの歴史と文化によって、議会の成り立ちや住民の意識が違う事から、いいとこどりをすればいいという訳にはいきません。そもそも誰にとっての「いいところ」なのか、どういった国の政治形態に対して「いいところ」なのかもバラバラだからです。そのことを踏まえつつも、各国の地方議会を調べていきます。
